研究について

研究テーマ

以下の研究を行っています。

<制御焦点/制御適合に関する研究> 

 近年,動機づけ研究の分野においては,制御焦点や制御適合について精力的に研究が行われています。そこでは,個人や状況と方略が合っていると(“制御適合”という),現在の活動(例えば“学習”)に対して“正しい”と感じられ,活動そのものの価値が高まり,活動へ積極的に従事し,高いパフォーマンスを示すことが明らかになっています。 

 この制御適合理論を援用し,個人の制御焦点(促進焦点型なのか防止焦点型なのか)や状況(促進焦点が活性化されている状況なのか防止焦点の状況が活性化されている状況なのか)によってパフォーマンスを高める方略が違うことから,個人や状況に合ったフィードバックやアドバイスの提示が重要であるということを検討しています。こうした研究の知見を積み重ねることで,学習者に合った方略の提示,フィードバックの仕方,学習教材に対する価値の高め方などについて提言できる可能性が考えられます。 

●研究プロジェクト

<創造性に関する研究> 

 日本の教育の現場において,創造性の涵養を目指した教育の充実が叫ばれています。創造的思考によって,人は,問題を効果的に解決し(Mumford & Gustafson, 1988),柔軟性を維持し(Flach, 1990),日々の生活における機会や変化に対処することができます(Runco, 2004)。新しい発明,独創的な科学的知見,斬新なプログラムを利用して,社会や組織は進歩し,変化する環境に適応できます(Oldham & Cummings, 1996; Goldenberg & Mazursky, 2001; Goldenberg et al., 1999)。 

 こうした創造性の重要性から,創造的思考がどのようにして生じるのか,どのようにしてそれを育むことができるのかを検討しています 

●研究プロジェクト

正常性バイアスに関する研究> 

 ⼈間の⼼は,予期せぬ出来事に対して,ある程度「鈍感」にできています。それは,⽇々の⽣活の中 で⽣じる予期せぬ変化に,⼼が過剰に反応して疲弊しないための⼼のメカニズムとして,正常性バ イアスが備わっているからです。正常性バイアス(normalcy bias)とは,「⾃然災害や⽕事,⼤規 模事故などに遭遇する⼈が,周囲の環境が突然⼤きく変化したとしても『たいしたことにはならな いはずだ』,『⾃分だけは⼤丈夫なはずだ』と思い込もうとする⾃⼰防衛的⼼理が発⽣する現象」の ことです。 

 新型コロナウイルス感染症拡⼤といった未曽有の事態において正常性バイアスが働きすぎると, 都合の悪い情報を無視したり,「⾃分(だけ)は感染しないだろう」「そのうち終息するだろう」など と過⼩評価したりして,⾮⾃粛⾏動の原因となり。また,正常性バイアスが正常な範囲で働かない ことにより,「感染を避ける⾏動」が暴⾛し,感染した⼈たちの否定的なレッテル貼りや差別につな がったり,デマや間違った情報が拡散しパニック⾏動につながったりします。 

 本プロジェクトでは,新型コロナウイルス感染症の拡⼤状況下において,われわれが正常性バイ アスを⽰すのか,ならびに正常性バイアスと⾮⾃粛⾏動ならびに感染者への怒りやうつ・ストレス との関連を検討しています。 

●研究プロジェクト

  詳細は,こちら(https://www.osi.tsukuba.ac.jp/fight_covid19/toyama/ )をご参照ください。

<自己認知に関する研究> 

 われわれ日本人はどのように自分や自分に起きる出来事のことを捉えているのか,そうした自己認知が動機づけやパフォーマンス,精神的健康にどのように影響をするのかを研究しています。


近年,楽観性-悲観性に関する研究が再び隆盛を迎えていますが,その背景にはこれまでのような楽観性が“善”で悲観性が“悪”であるといった二分極的な考え方ではなく,悲観性が肯定的に作用する場合もあり,逆に楽観性にも落とし穴があるといった知見が集積されるようになってきています。私は,楽観性(『ポジティブ・イリュージョン』や『楽観主義』)がパフォーマンスや適応に及ぼす功罪についての研究を行なっています。また,適応的な悲観主義と呼ばれている『防衛的悲観主義』と『楽観主義』のメリットとコストに焦点を当て,両者がパフォーマンスや適応に及ぼす影響やそのメカニズムを研究しています。  

●研究プロジェクト

<社会的比較に関する研究> 

 われわれは,たった1人で社会から孤立して生きているのではなく,様々な社会的相互作用の中で,有形無形な影響を受けています。動機づけにおいても例外ではなく,他者規定的な側面を強くもっています。例えば,優れた友人の存在によってやる気がでたり,逆に自分の不甲斐なさを思い知らされ,逆に意気消沈に陥ったりするということがあります。私は,こうした他者規定的な側面における動機づけに興味を持っており,他者(友人や教師など)が子どもの動機づけに及ぼす影響について研究しています。 


具体的には,自分と他人を比較する『社会的比較』が学業成績などのパフォーマンスにどのように影響を及ぼすのかといった研究や,同じ成績の子どもであっても,良くできる子どもばかりの学校あるいはクラスの中では,優秀な子どもたちとの比較のために否定的な学業的コンピテンスを形成し,あまりできない子どもばかりの学校やクラスの中では,レベルの低い子どもたちとの比較のために好ましい学業的コンピテンスを形成しやすい現象である『井の中の蛙効果』の研究を行っています。   

作成した尺度

外山が作成しました下記の尺度は,尺度の引用元となる文献を明示していただければ,事前に使用許可のご連絡をしていただく必要はありません。  

自由にご使用いただいて結構です。 

●楽観・悲観性尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

drive.google.com/file/d/1DJnJGwlROb6rzuEbS-oc_QVjbRI4cznP/view?usp=sharing 

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数(10項目)で除して下位尺度得点(楽観性得点,悲観性得点)を算出する。

引用元の論文

下記の論文を引用してください。

外山美樹 (2013). 楽観・悲観性尺度の作成ならびに信頼性・妥当性の検討 心理学研究,84 (3),256-266.   https://doi.org/10.4992/jjpsy.84.256 

<この尺度を使用した研究>

●子ども用楽観・悲観性尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

drive.google.com/file/d/1ONP28oWuWIShUXoNPf0IR1ySn9V5061E/view?usp=sharing 

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数(項目)で除して下位尺度得点(楽観性得点,悲観性得点)を算出する。

<引用元の論文>

下記の論文を引用してください。

●認知的方略尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

drive.google.com/file/d/1_pgf1WPmqCV7UfocLvGhzpeJjvyqqVqF/view?usp=sharing 

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数(5項目)で除して下位尺度得点を算出する。

<引用元の論文>

下記の論文を引用してください。

●努力についての信念尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

drive.google.com/file/d/1On2EmVKXReaH-cEHqS2bYOmcWX-Z1bzJ/view?usp=sharing 

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数(項目)で除して下位尺度得点を算出する。

<引用元の論文>

下記の論文を引用してください。

●困難な目標への対処方略尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

drive.google.com/file/d/1jZ1nRjkQEk-SiYPXr3oq-6Gv9Ynm3fz5/view?usp=sharing 

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数(5項目)で除して下位尺度得点を算出する。

<引用元の論文>

下記の論文を引用してください。

<この尺度を使用した研究>

●エンゲージメント尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

drive.google.com/file/d/1TPVzpW7E4NqsCdefjbbmMng-XFPWYyqt/view?usp=sharing 

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数で除して下位尺度得点を算出する。

<引用元の論文>

下記の論文を引用してください。

学業領域における制御焦点尺度

<尺度>

下記からダウンロードしてお使いください。

https://drive.google.com/file/d/15IJO-o2QuaH-ekAdOhEKgbIvzGsuRTPp/view?usp=sharing

<尺度の使い方>

 下位尺度の各項目を単純加算し,項目数で除して下位尺度得点を算出する。

<引用元の論文>

下記の論文を引用してください。

drive.google.com/file/d/17PCOFrQUg9O48DLIViEQhJhuB1khLRSB/view?usp=sharing 

過去の卒論のテーマ

●2022年度

 松本 篤

 日本語版知的謙虚さ尺度の作成3種類の尺度の作成を通じてー」

 大澤かりん

 サブゴールは動機づけを高めるのか?ー進捗モニタリングに着目してー

 篠木月香

 読解方略についてのモニタリングが想念の侵入に与える影響

  ーボトムアップ処理に着目してー

 早川朝望

 他者の提示がキャリア探索への行動意図に及ぼす影響ー制御焦点の観点からー

 宮田隆一

 「一人暮らしの大学生・大学院生の,自炊への認知と行動との関係」

 村山士竜

 「制御焦点とフィードバックの適合に関するメタ動機づけ的知識の検討」

 

●2021年度

 赤井志帆

 「中学生におけるセルフ・ハンディキャッピングと学業的・社会的達成目標の関連」

 池田凪沙

 「特性ノスタルジアと向社会的行動ー道徳アイデンティティの観点からー」

 志岐友晶

 「エピソード的未来思考が遅延価値割引に与える影響ー制御適合の観点からー」

 柴村侑沙

 「向社会的嘘はなぜ生じるかー主観的な親密度・アサーション・有害さの知覚からー」

 外山陽一郎

 「高校運動部員における過剰適応傾向とバーンアウトの関連

  ー指導スタイルの認知に着目してー」

 村川菜月

 「社会的比較志向性とポジティブな共感の関連ー注意の焦点に着目してー」

 朴  奎妍

 「大学生における時間管理とストレス反応の関連

  ー時間管理に対する他者からの評価と自尊感情を媒介としたモデルの検討ー」

 

●2020年度

 國光円歌

 「大学生活における重点からみた大学生の精神的健康の比較」

 佐川遥香

 「認知的方略が学業場面における先延ばし意識過程に及ぼす影響」

 志村 凛

 「大学生における動機づけ調整方略が課題価値および自己効力感に及ぼす影響の検討

  ―短期縦断的研究―」

 高橋史穏

 「運動部マネージャーの組織コミットメントに関するモデルの検討」

●2019年度

 蔵持菜摘

 「基本的心理欲求を支援・阻害する親の行動が大学生の進路選択に与える影響

  ―男女差に着目して―

 渋谷達郎

 「大学生における重大なネガティブ体験の意味づけが自己の変容を予測する

  プロセスの検討

 清水登大

 「自己制御を高めるためには?─制御焦点と心理的距離に着目して─

 冨田彩乃

 「非行為後悔体験の意味づけのプロセスモデルの生成

●2018年度

 岩切麻由香 

 「大学生サークル集団における適応感に影響を与える要因

  ―サークル集団への態度と集団フォーマル性に着目して―

 久下沼実咲 

 「大学生におけるアイデンティティ形成が学習行動を予測するプロセスの検討

  ―学習動機づけを媒介変数として―

 藤間友里亜 

 「場面緘黙経験者の適応・不適応過程についての研究

 廣田涼介 

 「自尊感情と精神的健康の関係におけるセルフ・コンパッションの調整効果

  ―自尊感情を細分化して―

 正岡 栞  

 「集団内葛藤状況におけるアサーションが葛藤対処行動に及ぼす影響の検討

●2017年度

 馬場大地  

 「ノスタルジアが時間的態度に及ぼす影響の検討―反芻特性・省察特性に着目して―

 濱口晃輔 

 「異文化体験で幸福感が変わる?―東洋・西洋各々の幸福観に着目して―

 林穂乃香 

 「報酬分配行動に影響を与える要因についての検討

  ―社会的価値志向性に着目して―  

 細川友恵  

 「大学生における恋愛関係・性役割観と養護性との関連―男女差に着目して―  

 宮澤銀河   

 「罪悪感の喚起要因が罪悪感と補償行動に与える影響の検討

  ―意図性の有無に着目して―

 西宏二朗    

 「気晴らしのプロセスに及ぼす自己志向的完全主義の影響の検討

 山口ひな子    

 「自尊感情・恩恵享受的自己感と幸福感の関連―日常の出来事を媒介して―


●2016年度

 雨無友博   

 「大学運動部活動における部員の自律的動機づけが適応感に及ぼす影響

  ―主将のリーダーシップを調整変数として―

 阿部曜  

 「他者や外的対象へのめりこむ傾向と自己愛との関連―男女差に着目して―

 久保田直樹  

 「表情刺激への多面的閾下単純接触効果―表情の感情価に着目して―

 小杉慎一郎   

 「社会的規範の葛藤場面における迷惑行為と個人特性の関連

  ―共感性・自意識に着目して―   

 杉木貴大    

 「メタステレオタイプ操作と集団相互依存観が外集団に対する反応に及ぼす影響

 樋口暁彦    

 「他者軽視は他者への低い評価につながるのか

  ―領域の重要性・他者との関係性を考慮して―


●2015年度

 河村綾花    

 「正・負のプロセスフィードバックが内発的動機づけに与える影響

  制御焦点と特性的自己効力感を調整変数として

 笹森光馬   

 「大学生サークル集団におけるコミットメントが寄与行動に与える影響の検討

 茅根有美   

 「ストレスイベントについての自己開示が精神的健康に与える影響

  対人場面とSNS場面を比較して

 中嶋亜美    

 「制御焦点の違いが上方比較後の感情・行動・パフォーマンスに及ぼす影響

  同化と対比に着目して

 成田蘭     

 「性格に関するフィードバックの形式による自己への影響の違い

  理想自己・自己認知に着目して


●2014年度

 小田いくえ     

 「努力をほめると内発的動機づけは持続する?解決可能・不可能課題に注目して

 紺野 凌    

 「スポーツ競技者の認知的方略と試合への対処

  個人差を考慮した認知的介入のために

 曽根奈央    

 「養育態度が中学生の友人関係および攻撃行動に与える影響

  自尊感情と他尊感情を媒介して

 田岸愛理     

 「レジリエンスとソーシャル・サポートが大学新入生の適応感に及ぼす影響

  資質的レジリエンスと獲得的レジリエンスに分けて

 長峯聖人      

 「中学生における集団間の社会的比較に伴う感情の検討

 藤瀬貴久       

 「かけ声を出す動機がスポーツ競技集団のパフォーマンス予測要因に及ぼす影響

 山内琢真       

 「会話場面において愛想笑いのもたらす効果

●2013年度

 大下晃輝      

 「学習場面における感情と健康状態に関する検討認知的方略の違いに着目して

 大塚優希     

 「スポーツ場面における指導者のことばがけがやる気に及ぼす影響の検討

  認知的方略の違いに着目して

 倉石和澄     

 「ユーモラスな依頼は攻を成す?受け手の感情に着目して

 鈴木理絵      

 「対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデルにおける失敗後の抑うつ感情の

  生起プロセスに関する検討

 間中未来       

 「学習性無力後の課題成績ならびに感情に関する実験的検討

  防衛的悲観主義と方略的楽観主義に注目して

 米倉元気        

 「リーダーシップスタイルとエンゲージメントの関連制御適合に着目して

 綱島彩子        

 「スポーツにおける競争経験が競争心に及ぼす影響

  競争する理由と周囲の反応を媒介として

 山下裕之         

 「他者軽視および自尊感情が適応感に及ぼす影響

  セルフハンディキャッピング場面に着目して

●2012年度

 丹下結子       

 「競技時の目標志向性および心理技法とフロー体験との関連についての検討

 西島聡美      

 「対人拒絶場面での受容期待と対処行動に影響を及ぼす要因についての検討

  ―自尊感情と原因帰属に注目して―

 六本木達矢      

 「ポジティブ感情の拡張・形成理論における拡張効果のメカニズムについて

  ―自己知識の表象を指標として―  

●2011年度

 國松朋彦        

 「運動学習における要約フィードバックと自己評価の効果

  変数間の補正関係の調整を必要とするスポーツ的課題を用いて

 田村彩       

 「失敗状況における気晴らしに関する研究失敗の捉え方の違いに着目して

 水野賢彦       

 「学歴イメージが対人印象判断に及ぼす影響高卒者イメージに着目して

 山本愛美      

 「大学への進学動機から学習動機づけへの影響時間的展望を媒介として

●2010年度

 今坂雄一郎        

 「障害者への支援・交流の意欲及び行動についての研究

  意欲-行動間のずれと個人的要因の関係

 小俣匡平        

 「他者の言動をKYと感じるパーソナリティ特性について

  攻撃性,共感性,公的自意識に着目して

 津島摩由翔        

 「大学生における性役割観及び性役割葛藤と自尊心との関連

●2009年度

 武中智美       

 「過剰適応傾向が被賞賛後体験感情に与える影響学業面からの検討

 水野明日香         

 「父母の養育態度が性役割態度を媒介にして職業観に与える影響

 村上夏美         

 「両親・親友・重要な他者との心理的距離が精神的健康に与える影響